Le Chevalier du Lion d'Or

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールで起こる日々の出来事・・・
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Before the party


ふぅ・・・・・・



・・・誤算?


いや、認識していなかったわけではありません。



・・・慢心?


いえ、そういう問題ではありません。





厨房、ルーム、グレートホール、庭園、

それぞれインスペクションも終わり、

後はお客様を待つばかりだというのに・・・



肝心のアルヴァ様が館に戻られていないとは・・・!



先刻、シェーンハルス伯爵家ご子息のヴィルフリート様を伴い

お出かけになられたところまでは把握していたのですが・・・

大切な日に目を離してしまうとは・・・


…不覚でした。


パーティー当日に館の主たるアルヴァ様が不在では話になりません。

しかし、

寝室に愛用の枕とリトル・ベニーの存在が確認されていることから、

それほど遠くへは行っていらっしゃらないはず・・・


追っ手を差し向けるまでもありません・・・か。


帰っていらした暁には、

当分の間おやつを控えさせていただくと致しましょう。






本日のこのパーティーに

暫くぶりにダニエル様とエミール様がお揃いになるのは

大変喜ばしいことではございますが・・・


結局、

クライド様からは招待状の返事が戻ってくることはありませんでした。



シェーンハルス伯爵家やネフィラ・クラヴァータなど、

各地でのクライド様の情報は把握しているのですが、

ここしばらくの消息は把握できていません。


こちらの問題の方が

当家にとって懸念すべき事態であるといえそうです。





そういえば…

本日は珍しいお客様がご来館されます。

何がしかの手がかりが得られるかもしれません。



さて・・・、準備を急ぐとしましょう。


 
| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 07:00 | comments(0) | - |
Emergence


陽も陰り、少し涼やかな風が吹き始めてきました。



客室とワインセラーと食器類のインスペクションも終わり、

普段であればアフタヌーンティーの準備を始めようかという時間なのですが、

暫くはそうもいかないようです。




中止になったアルヴァ様の誕生パーティーから二週間が経過しました。

この館も徐々にではありますが、

いつもの静謐な空気を取り戻しつつあります。

そう、アルヴァ様を除いては、ですが・・・。






主棟前の庭園から館裏の牧草地へと、ひたすら走るアルヴァ様。

シンメトリックに刈り揃えられた薔薇園から温室の横を抜け厨房裏へ、

そして緑深い森から小高い丘を登り、馬小屋脇を通過し、

屋敷の裏門へ。






・・・12周目。





最初は生まれたての小鹿のようにふらふらと蹌踉めいていたというのに、

今はしっかりと前を見据え、大地に足を踏み出している。


そしてその懸命な姿に私はどこか懐かしいような、

郷愁を感じてしまいます・・・



風に靡く眩いオリーブグレーの髪の輝き、

目指すものを見つけた生き生きとした瞳の輝き、

・・・今は亡きあの方の面影を-----







-----あの日


一旦は白紙に戻されたものの、

ダニエル様がヴィヴィアン様と婚約を発表し、

父君であらせられるサリヴァン様がお亡くなりになった。



その動揺を引きずったままでいるところに、

ダニエル様、エミール様は自らの人生の選択をすべく、

この屋敷をお出になられ・・・


そして全幅の信頼を置かれていたクライド様までもが、

自らの進むべき道を歩むと決意され屋敷を出られたことで、

拠り所を失ってしまったアルヴァ様は心の平衡が壊れてしまわれた。



この広い屋敷にアルヴァ様ただ一人が取り残され、

葛藤の糸を吐き、後悔の念に絡めとられ、

羽化することのない繭になってしまったのです。









アルヴァ様の豊かな感受性はさながら儚いガラスのようなもの。

光が当たっている時は美しく輝くが、

自信を失ったとき、脆く砕け、自らをも傷つけてしまう・・・




花に太陽と水が、

鳥に空と止まり木が必要なように、

私は心にも糧が必要なのだと考えます。



たとえ一時的なものであるにせよ、

心満ち足りていた頃の時間に立ち返ることで、

本来のアルヴァ様の輝きを取り戻していただけるはず。

そのきっかけを作ることができるはず・・・




少々浅薄な目論見でしたが、

クライド様をはじめとする皆様のおかげで

その意図するところを達することができました。






・・・13週目。




さて、次の替えのタオルを用意しましょうか。





目的を持って邁進する姿は美しい。


ドーソン家四人の御兄弟の中で唯一人、

自らの進むべき道を見い出せなかったアルヴァ様が

漸く自らの足で立ち上がりました。

今はまだ覚束無い足取りですが・・・






サリヴァン様・・・

あなたならどう声をかけて差し上げますか・・・?


 
| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 14:00 | comments(0) | - |
Early morning tea


ふむ・・・


料理とワインはこれで良し。





あとはつい先刻届いた招待客の荷ほどきと寝室のチェックか・・・


力仕事はヒューイとヨアンに任せるとして、

ナオミとメーベルとアメリアにはそれぞれ担当してもらった部屋を、

レイラには部屋に飾る庭の切り花を用意してもらいましょう。





厨房にも顔を出さなければいけないな。

確かメニュー表に変更が・・・



・・・と、その前にアルヴァ様へモーニングティーを運ばなければ。







アルヴァ様お気に入りの紅茶といえばパラダイス。


トロピカルフルーツの果肉をブレンドした瑞々しく甘酸っぱい味わい。

アルヴァ様らしい華やかな紅茶ではありますが、

寝覚めの一杯に相応しくはありませんね。





ここはアッサムのブロークン・オレンジ・ペコーか・・・

ダージリンのブロークン・ペコー・スーチョンも捨てがたい・・・



・・・やや強い風味ですが、大切なパーティー当日です。

半分眠っていらっしゃる頭を覚醒していただきましょう。

飲みにくかった場合に備え、ミルクも用意しておきますか・・・









おや・・・ナオミ・・・?



なぜこんな時間にアルヴァ様の部屋から・・・?


なぜ・・・デザートプレートを持って・・・






まさか・・・・・・






「アルヴァ様!!!」

 
| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 08:00 | comments(0) | - |
Tea break


カチャ・・・


ゴトッ・・・


カチャ・・・






爽やかな風が金色に輝くレースカーテンを翻し、

ほのかに青い香りが館を包み込む。



暖かな木漏れ日に照らされ、パーティー用のカトラリーを磨いている午後が

私にとって最も心の安寧を感じるひと時です。




そう。

アルヴァ様の誕生パーティーが二週間後に迫っているのです。


素晴らしき一日となるように完璧に準備を進めなくてはいけません。




何しろ、すでにこのお屋敷を離れられた御兄弟の、

長男ダニエル様、次男クライド様、四男エミール様が

久々に勢揃いする喜ばしき日。


ついつい気持ちも高揚しようというものです。




おや?

ソルトセラーに黒ずみが・・・

いけませんね。

ビスケットウォーマーも曇っています。

これも、いけません。

いけません。






前当主サリヴァン様がお亡くなりになられてから7ヶ月。

未だ喪も明けていないこの時期ではありますが・・・


皆が変化を受け入れられていないこの時期だからこそ、宴を。








・・・・・・ん?


この甘い香りは・・・

プディング・・・クレープ・・・?





ふむ、両方ですか・・・。






・・・ふぅ・・・・・・お茶にしますか・・・・・・

 
| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 15:00 | comments(0) | - |
面影の少年
 

漆黒の闇が広がり


静寂が支配する夜


紺青に佇む館





そしてそこにもう主はいない・・・






もう40年近く前になるのだろうか・・・

私は父に連れられて、この紺青の館に初めて足を踏み入れた。



薔薇が咲き誇る荘厳な門を抜け、

重厚な扉の向こうに広がる天蓋が

陽光に照らされて黄金に輝く様を

私は我を忘れて見入っていた。


その時、ひときわ響く少年の声が私を呼び止めた。




誰だ?お前は。




眩く輝くオリーブグレーの髪に

吸い込まれそうなほどに美しい瞳の少年が私を見上げていた。



少年は私より4歳年下ではあったが、

常に挑発的な態度で周囲を自らの世界に引きずり込んでいた。


生意気で無礼で刺激を追い求める少年に眉をひそめる者は多かったが、

その刺激的なエネルギーに満ち溢れた少年に私は瞬く間に心を奪われた。




時は流れ、少年はやがて青年になり、父親となり、そしてこの館の主となった。

私はその傍らに立ち続け、影となり支え続けてきた。



そう、あの日から、ずっと・・・








凍えるほど冷たい雨に打たれ

嗚咽と慟哭が谺する墓標の元

参列者に見守られ

あふれるほどの薔薇に覆われた柩の中で

静かに眠るサリヴァン様の御顔は



・・・遥か昔に出会った少年のそれだった。
| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 06:56 | comments(0) | - |
輝ける日々


マカロ〜ン♪ マカロ〜ン♪ フンフフ〜ン♪



もうしばらくするとこのような鼻歌が聞こえてくるのであろうか・・・



いよいよ来月に迫ったパーティーにハウエル伯爵家からマイケル様がお見えになる。

大切な賓客の一人であらせられることは勿論だが、

色々な意味で片時も目を離せないお方であることは間違いない。


何しろ予想外の行動をされるお方だ。

万全を期して通常の予測の更に上の上を行かなければならない。



壊れやすい調度品はしまっておいた方がよさそうだ。

使用していない部屋や通路には鍵をかけておかねば。

つまみ食い対策として料理やデザートも多めにご用意した方が良いだろう。


早速手配をしなければ・・・


しかしそんな私の苦労など、毎日マイケル様を見守っておられるスペンサー殿に比べれば些細なものだ。



またグラスを傾け苦労話・・・もとい、思い出話を聞かせていただくとしよう。






アルヴァ!誕生日おめでとう!

私、頑張ってクッキーを焼いたのよ。はい、召し上がれ♪




嬉しそうに微笑んだヴィヴィアン様がクッキーを抱えて訪ねていらしたのはいつだったか・・・

恐る恐る召し上がっては見たものの皆で腹を壊したものだった。



あの頃のヴィヴィアン様はいつもアルヴァ様の隣にいらして、甲斐甲斐しく世話を焼いていたものだった。


今ではヴィヴィアン様は見違えるほどに、お美しく成長された。



その姿は現在のアルヴァ様の目にはどのようにお映りになるのだろうか・・・




フッ・・・今回のパーティーには懐かしいゲストが多数ご来館される。

やる事は山積みで実務上かなりの負担である事は確かなのだが・・・



日増しに高鳴るこの胸の鼓動はなぜだろう?




いたずらばかりして皆をひっかき回すマイケル様


いつも騒動に巻き込まれて泣いてばかりいるアルヴァ様


そしてそれを優しく見守りながらも、図らずも更に騒動を大きくしてしまうヴィヴィアン様


中心にいて皆をまとめてくださっていたのはクライド様だったか・・・


そんな騒ぎを横目に静かに本を読むエミール様


キョトンとした表情でいつも一番後をついてくるローズマリー様


ダニエル様は少し離れたところで佇んでおられたな




誰もが無邪気な笑顔で笑い、怒り、泣き、大騒ぎした。


あの輝ける日々がまた戻ってくるわけではない・・・

・・・皆、もう大人なのだ。



しかしながら、あの美しい時間を思い起こさずにはおられない・・・



何かを・・・期待せずにはおられない。



皆様にとって、

そして私にとっても

かけがえのない大切な思い出・・・

| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 03:00 | comments(0) | - |
紺青の守り人


 ル・シュバリエ・デュ・リオンドール。


私がこの館に、ドーソン伯爵家に仕えて幾年月が過ぎただろう。

私の父も祖父も曽祖父もこの紺青に映える館をお守りしてきた。

もはや我がワーナー家そのものがこの屋敷の一部のように感じられる。




ヘンリー、この書類を父上のところへ届けてくれ。



今日も滞りなく執務は遂行される。もはや父上に取って代わろうかという仕事ぶり。

その評判は家の内外を問わず高く評価され、

このドーソン家を実質取り仕切っているダニエル様。


もはやダニエル様無しでは執務は立ち行かなくなるであろうし、

実質ドーソン伯爵家の家督を継承されているといっても差し支えない。

ずいぶんと頼もしくご成長されたものだ。


頼もしく・・・?


いや、違う・・・な。

どう言えばいいのか・・・


私の中で湧き上がりつつある違和感。いや、・・・疑念?


何を言っているのか・・・?


私はこのドーソン伯爵家の執事だ。それ以外の何者でもない。

そのようなことを考えていいはずがない。


この紺青の館の繁栄こそが私の全てであり、それを阻むものは容赦はしない。


そう・・・容赦は・・・。





ヘンリー、お前の考えを聞きたい。



放蕩を気取っているようで、其の実、物事の裏側をも見通す目をお持ちのクライド様。

しかしながら毎月当家に届く請求書の束には、もはや苦言を通り越して目眩さえ覚えてくる。


それでいて何も考えていないのかといえば、時折予想もしない大胆な発想に驚かされる。

この方こそがドーソン伯爵家の行く末を委ねられる器の持ち主なのだと思わされることがあるのだ。

私にとって最も興味深い存在であるといえよう。



私のこの疑念を解決してくださるのは、この方なのだろうか・・・?



それはまだわからない。

それがはっきりする時がこの紺青の館の行く末が決まる時なのだろう。


待とう。

時が満ちるまで・・・






ヘンリー!ヘンリー!どこにいるんだ!ヘンリー!




私は聞こえるはずのない呼び声に・・・ふと我に返る。

疲れていたのか・・・少し眠ってしまったようだ。



その声が響き渡っていた頃にはこの館も随分賑やかだったのだが、

今はアルヴァ様はエミール様とともにヘイスティングスに戻られ、館も落ち着きを取り戻している。



束の間の平穏。



現在この館には静かにゆっくりとだが、確実に暗雲が近づいている。

それが単なる雨雲で終わるのか、館を揺るがす大きな嵐となるかはわからない。


しかし、今後どのような事態になったとしてもお二人はお守りしなければならない。

荒れ狂う嵐に立ち向かうには今のお二人はあまりにも若い。



来月のパーティーにはアルヴァ様とエミール様が館にお戻りになる。

それまでに不安の芽は摘み取っておかねばなるまい。



しかし・・・・・


| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 23:30 | comments(0) | - |
黄金の輪
 

秋の心地よい風が木々の枝葉を揺らす

それは深緑からセピア色へ移りゆく時を知らせる大地のざわめきのようにも聞こえ

腰を下ろしセイロン・ウバの香りを嗜んでいた私の背中を急かすように吹き抜ける



フッ・・・のんびりしてはいられないな。




今、ドーソン伯爵家は三男アルヴァ様と四男エミール様の帰省と

再来月に開催されるパーティーの準備で慌ただしくなっている。



御兄弟が四人揃われるのはいつ以来だろうか?


実直勤勉で現実主義の長男ダニエル様

一見放蕩に見えて強かな戦略家の次男クライド様

お父上そっくりで負けず嫌いの三男アルヴァ様

常に冷静で優しいが、鋭い分析力を持つ四男エミール様



この館で生まれ、同じ学校に通い、同じ生活を送っているようで、全く違った個性の四人の御兄弟。

その立ち並ぶ様はドーソン伯爵家の輝ける未来を暗示する輪のようで・・・

今では父君サリヴァン様も目を細めておられるに違いない。




思えばこの館には多くの思い出を残して、いろんな人々が集い、去っていった。

様々に去来する想い。



しかしそれも全てはドーソン伯爵家の繁栄あったればこそ。だ。



秘書ブリジットは今やダニエル様の片腕として実務を取り仕切るまでに頼もしく成長し、

フットマンのヒューイは明るくどんな仕事でも嫌な顔ひとつせずに引き受けてくれる。

コナーはまだここへ来て1年半ほどだが、控えめで皆の信頼も厚い。・・・ただ時折見せる表情に気になるものはあるが。


ナオミはメイド長として真面目な仕事ぶりで皆を取り仕切ってくれている。

メーベルは激しい感情をむき出しにすることもあるが実務に優れている。

アメリアは天真爛漫な明るいムードメーカーと言えようか。

あと・・・ヴェルニエ伯爵家から来るというメイド・・・マリカと言ったか・・・

あのヴェルニエ伯爵家から来るのだ。ただものではあるまい。




個性的な面々に支えられこのドーソン伯爵家は繁栄を続けている。

それは今までも、そしてこれからもだ。





パーティーの迎賓衣装や食器の手配も済んだ。

次は我が邸宅のシンボルである薔薇のチェックもしなければ・・・やることは山積みだ。



ポツ、 ポツ・・・



ん・・・・・雨・・・か。


風も吹いてきた。



フッ・・・今日はここまでということらしい。




そうだ。先ほど中断したセイロン・ウバを楽しむことにしよう。



私は濡れたジャケットを抱え自室へ向かう。



薄暗い燭台の灯りに照らされ魅惑的なメントールの深い香りが辺りを支配する。

喉を引き締めるほどよい渋み。

そして赤褐色の縁に浮かび上がる黄金の輪(ゴールデンリング)・・・


私にとって何物にも代え難い至福のひととき・・・
| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 06:46 | comments(0) | - |

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