Le Chevalier du Lion d'Or

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールで起こる日々の出来事・・・
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baisser


以前こちらに訪れたのはそう……
まだ暑い夏の最中
アルヴァ様のお誕生日パーティー以来。

今では寒さも通り過ぎて、冬を越した花が顔を覗かせています。
当たり前のように過ごしていた場所が、
こんなにも久しぶりと感じるようになるなんて。
季節が過ぎるのは、本当に早いのですね……。


あのパーティーの一件以来、こちらの様子はあまり届いてはいなかったのですが
どうやらだいぶ様子が変わられたよう。

こっそりとメイドのアメリアさんが教えてくださいました。

アルヴァ様が努力されて、以前の体型に戻られた……と。

残念ながら、お会いすることは叶いませんでしたが……
その分、随分と活発になられたようですね。

あのお姿も可愛らしかったですが、

あのままではきっと
ダニエル様は……


どうやら今回はクライド様はお帰りにはならなかったご様子。
エミール様はお元気そうで……

ええ、何事もなくパーティーを終えられたようで、少し安心しました。


ただ……

春だというのに、どうしてでしょうね。
どこか重たい空気を感じるのは……


いえ

きっと気のせいでしょう……


さあ、ダニエル様、お迎えの馬車が参りましたよ。


 
| 秘書 ブリジット・マリヴォンヌ・サルトル | 17:00 | comments(0) | - |
Malars


外を激しく濡らす雨は、ダニエル様の邸宅の中ではとても静かに響いていました。

あちらに居たのが随分と昔のように感じるのに、
ル・シュバリエ・デュ・リオンドールはちっとも変わってはいなくて。

ですが、久しぶりにお見かけしたアルヴァ様は、以前とは随分と違うお姿で、それはもう驚きました。

そう……小さい頃に、学園の寮母だった母が作ってくれた
ふわふわのメレンゲ菓子のようで……

ふふ、今思い出すととても愛くるしいお姿……


けれど、思い出されるのは愛くるしいアルヴァ様だけではなくて。


『自己管理能力の著しく低い人間』


実のご兄弟だと言うのに、ダニエル様から紡ぎ出される言葉はとても厳しくて。

いえ、実のご兄弟だからこそ、なのでしょうか。

そこにはまるで、お父様のサリヴァン様よりも前から
ドーソン家に伝わる重厚な格式のようなものが隠されているようで……

ご自身にも厳しいダニエル様……


ですが

それでは

あまりにも……


ふと窓の外を見上げると、
いつの間にか黒く厚い雲の隙間から、光が射し込んでいました。


ダニエル様のお心にも

どうか晴れ間が

安寧が訪れますように……
 
| 秘書 ブリジット・マリヴォンヌ・サルトル | 18:00 | comments(0) | - |
concentrate


それはとても見覚えのある刻印の入った招待状を手に、静かな廊下を歩く。
ダニエル様へと宛てられたその招待状には、7月にお誕生日を迎えられるアルヴァ様の誕生日パーティーのもの……

そう……
もうそんな時季なのですね。

ダニエル様がル・シュヴァリエ・デュ・リオンドールを出てこちらの別宅へと移り住むようになってから、気が付けば随分と経ったような気がします。
すっかり慣れた別宅は、あちらのお屋敷とは違って静かで……そう、ダニエル様らしいといえば、その通りなのかもしれません。

このところご公務も忙しく、あまりお休みになられていないようで……
それに時々、どこか焦ったようなご様子もお見かけします。
また……
いえ、お身体を崩されないよう、ダニエル様をお助けできるようにしなくては……



“下らない”
そう言って預けられた手紙の先のパーティーに
少しでもダニエル様の気が紛れるようなことがあれば良いのですが……


 
| 秘書 ブリジット・マリヴォンヌ・サルトル | 15:00 | comments(0) | - |
rumeur
 

ああ……

サリヴァン様が、血を吐いて亡くなられたなんて……

――元気だったのに……
   普通にお酒を飲んで……
   なのに……

アルヴァ様の言葉が頭の中で蘇る。

そんな…まさか…
そんなはずないわ…


振り切ろうと首を振っても、その言葉は消えるはずもない。
手が微かに震えているのがわかる。
胸が締め付けられ、激しく鳴る。


――どうやらこのところ、父は体調が優れない様子……
   知り合いの医者に調合してもらったものだ……


まさか、あの薬は……

いいえ、でも、このところサリヴァン様の体調がよろしくなかったのは、事実……
ただの偶然だわ……
原因だって、まだわかっていないのですもの……
きっと……


――ヴィヴィアンとの結婚は、最初から計画に練りこんであった。
   
   君に伝える必要はないと思ったんだ。



あの方の言葉が、やけに静かに、けれど一際大きく、脳裏に響き渡る。


違う…
違うわ……

あの方は…
ダニエル様は、そんなことするような方ではないわ…!!


――君ならわかっているんじゃないか? 兄上の言うことが、事実かどうか……


ああ…

何を信じたらいいの。

私は……
私は…………



| 秘書 ブリジット・マリヴォンヌ・サルトル | 06:30 | comments(0) | - |
rêverie


「ああ、いけない」

卓上の時計を見て、思わず呟く。

気づけば、もうこんな時間……
来週には大きなパーティーを控えて、以前にも増して忙しい。
片付けた端から、増えていく仕事を片付けていると、つい時間を忘れてしまう。

あと半刻ほどで、ダニエル様がお帰りになる。
そうしたら次は…


ダニエル様も、お忙しいご様子……
お身体を壊されないかしら。
このところ、だいぶ冷え込んできているし、心配だわ。
お帰りになられたら、ヒューイさんにお願いして体の温まる、レモンジンジャーティーを淹れていただこうかしら。
…メーベルさんの方が、良いかしら…


ああ、そうね。

ダニエル様がお帰りになる前に、閲覧していただく書類をまとめて、もう一度確認しておきましょう。

それから…


ふと

一枚の紙に目が止まる。


『経過報告』

……工程は、順調。
一部に若干の遅れもあるが、来月末には終了の予定。



ああ……


書類を取り上げ、自分のファイルにしまう。
まだ、どなたかにお見せするものではない。

けれど、これが終わったら……

小さく、ため息をつく。


「ダニエル様……

本当に……このままで、よろしいのですか……」


届くはずのない声は、
静かに部屋の中で消えていった。

 
| 秘書 ブリジット・マリヴォンヌ・サルトル | 16:30 | comments(0) | - |
mathématiques


 卓上の書類の束の一つを取り上げ、目を通す。

そうそうたる顔ぶれの名前の羅列。

古くからのお付き合いで、仲も親しいよく知った名前から

付き合いこそ長いものの、便宜上だけの名前もある。



ほぼ全て、招待状へのお返事も頂いている。
来月のパーティーの準備も、順調。
ヘンリーさんとナオミさんのおかげね…

今のうちに、ダニエル様のご公務の書類を、片付けておかなくては。

別の書類を取り合げ、ファイルにしまう。
廊下へ出ると、廊下の向こうに見慣れた顔が見える。

この時間に、このあたりでお姿を見かけるのは、珍しい。
いつもは…
なるべく、顔を合わせないようにと、まるで避けているようなのに……



ふと、さっき見た、名前の羅列が頭を過ぎる。

あのリストを見たとき、あの方は何ておっしゃられたかしら。
きっと、全く違うことをお考えになられたのでしょうね…

数学の学術書よりも、短調に並べられた文字。

けれど、数式のように、きちんと意味のある名前…

ダニエル様のご意志で、選び出された、意味のある……

そう…



気がつくと、あの方の姿は消えていた。
それと同時に、どこか身勝手な安堵を感じる。



お二人がお顔を合わせずに済むのなら…

ダニエル様の、苦しそうなお顔を少しでも見なくていい…


けれど……
このままでは……

ダニエル様……




| 秘書 ブリジット・マリヴォンヌ・サルトル | 06:34 | comments(0) | - |
Le conte de fée
 

アルヴァ様とエミール様が学園にお戻りになると、何だかお屋敷は少し静かになったよう…
来月の頭に開かれるパーティをはじめ、いくつかのパーティの準備に、皆、忙しく立ち回っている。
慌ただしいはずなのに、どこか静かに感じる。
次にお二人がお戻りになるのは、来月のパーティか…

そんなことを考えながら、図書室の前を通り過ぎると、ふと、エミール様を思い出す。

「狼と七匹の子山羊、かな」

以前と変わらず、本を沢山お読みのご様子だった。
どんな童話が好きだったか、そんなお話をした。

グリム童話……
同じお話でも、ペローのものとはだいぶ表現が違ったはず。

「これは、大人になってから…」
穏やかに微笑んで、そっと、私の手の届かない高い場所へ本をしまう、母を思い出す。
あれは確か
子供向けに直されていない、グリム童話……
確か、あの本の内容は……


なぜかしら。

あんなに穏やかにお話していたはずなのに、どこか、ずっと奥の方に、低くて静かな音を感じた気がする。
気のせいかもしれないけれど…

ふふ…
数学論者の言う表現ではないわね……



「ブリジット?」

 聞きなれた声に、振り返る。

「ダニエル様」

 表情こそ変えないけれど、何を言おうとしていたかが感じ取れる。

「只今、お部屋に伺うところでした」

 そうか、短く呟くダニエル様の後ろへつく。

「あ…」

 思わず小さく、声を漏らす。
 
「どうした、ブリジット」

 ほんのかすかに
 香りが動く。
 この香りは…

「いえ、何でもありません」
 静かに微笑んで答えると、
 再び歩き始める。

 
 イングリッシュラベンダー……


 香りの女王が、どうかダニエル様を守ってくださいますように。


| 秘書 ブリジット・マリヴォンヌ・サルトル | 07:09 | comments(0) | - |
La Belle au bois dormant



窓が大きく軋む音で、ふと顔を上げる。
窓の隙間からわずかに吹き込む風が、灯りを揺らす。


いつの間にか、こんな時間……


時計を見れば、随分と時間が経っている。
知らないうちに、仕事に没頭していたよう。


時折、窓の外から強い風の音が聞こえる。
秋の強い風。
季節の移り変わりを感じる。


卓上に広がった書類をまとめ、ファイルにしまい、冷めてしまった紅茶に口をつける。


この書類をお持ちするのは、明日にしましょう。
今日は、もう遅い。


わたくしが、秘書としてお仕えしている、ドーソン伯爵家長男のダニエル様。
今、お部屋に伺っても、
きっと まだ起きていらっしゃるのでしょうけれど……
このところ、ご公務も忙しくなってきている今、
無用な負担を、あの方におかけすることもありません。


卓上の灯りを消すと、また、強い風の音が聞こえてくる。


窓の外を見下ろせば、風に合わせて、木々が大きく撓るのが見える。
窓ガラスが小刻みに揺れ、軋む。
けれど、この大きなお屋敷が揺らぐことはない。
大きくて、豪奢なお屋敷……


貴方様が、お守りするのですから。
そうでしょう?
ダニエル様

| 秘書 ブリジット・マリヴォンヌ・サルトル | 20:46 | comments(0) | - |

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