Le Chevalier du Lion d'Or

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールで起こる日々の出来事・・・
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隙間風


ドーソン伯爵家主催のパーティーの招待状が届いた。


…既に主は死んだというのに。

その長男に、招待状が届く。


『誰が、誰に。』


意味を考えれば奇妙な便りだ。


主を失った館。


相変わらず成長を感じない弟からの、

書き殴ったような一文。

『以前の僕に戻ったんだ!』


ところが、結局弟と顔を合わせることはなく、

元々底辺まで下がりきった弟の評価は、

以前と何の変化も生じることはなかった。


母はもうこの世におらず、

父は病に伏せた。


遺された兄弟も一人また一人と館を離れていく。


果たして、この館は亡霊が動かしているのか。



…暦の上ではもう春だというのに、夜はまだ冷えるな。



さぁ、夜が明けたらすぐに帰るぞ、ブリジット。

 
| 長男 ダニエル・ブラッドリー・ドーソン | 17:00 | comments(0) | - |
burn my「 」


一体、何を考えているんだ…っ!



パーティーの趣旨からして下らないだろうと予想はしていたが、
よもやあのような姿で迎えられようとは…。


ヘンリー、いや、ヘンリーに限らずとも気付かなかったわけではあるまい。
何故アルヴァを放っておいた?
父上の死後、皆、正気を失ってしまったとしか思えない。




『兄上にご自分の間違いを、その身を以て感じていただくまでは…。』


クライド…。
誰に何を吹き込まれたか知らないが、オマエにドーソン伯爵家の跡取りという未来は存在しない。


これ以上、ドーソン伯爵家が間違った方向に進まないように…



私が導くしかないんだ。

 
| 長男 ダニエル・ブラッドリー・ドーソン | 19:00 | comments(0) | - |
one point


「ダニエル様、ル・シュバリエ・デュ・リオンドールからお手紙が届いております。」

秘書のブリジットが差し出した一通の手紙。
別邸に住むようになってしばらく経ったが…リオンドールで何かあったのだろうか。


**********


「…下らないな」

手紙を読み終えて思わず漏れた言葉を聞き、ブリジットは怪訝そうに手紙を覗きこんだ。

「これは…、アルヴァ様の誕生日パーティーの招待状、ですか?」

急を要する内容でもなければ、父上の相続の件を匂わすような文面も特に見当たらない。
一体、ヘンリーは何のつもりでこんな招待状を寄越した…?

「…チッ」

…無意識に漏らした舌打ちの音に、自ら驚いてふと顔を上げた。
そこで見たものは、そんな私と同じか、それ以上に驚きの色を浮かべたブリジットの顔だった。

父に代わりこなしている公務が回らないわけではない。
それはリオンドールにいた頃も現在も変わらない、はずなのだが。

「…そんな顔をするな、ブリジット」

「いえ…。」

何か言いたげな彼女の顔を見ると、溜め息混じりに苦い笑いが込み上げてきた。

すまない、『これ』の返事を出しておいてくれるか?

そう言って手紙を手渡すと、彼女も私につられてか、何とも言えない笑みを浮かべた。


「…フッ」


そうだな…、
じゃああとは…いつものブーケロワイヤルを。
| 長男 ダニエル・ブラッドリー・ドーソン | 15:00 | comments(0) | - |
11:34 PM


 姦しいパーティーも終わり、館には久方ぶりの静寂が訪れた。


それにしても、あの愚弟たちには呆れた。

騒ぎ立てるくらいなら、医者でも呼べば良かろうに・・・。



今回の件について、暫くは伏せておくべきだろう。

使用人たちも好き勝手に思案を巡らせているところだろうが、

私の計画は順調に進んでいる。


ヴィヴィアンの件もそうだが、

今月末には引渡し可能だというあの件も、

父上の件も、

今の私にとっては全てが追い風となるだろう。


アルヴァは暫くは立ち直れないだろう。

エミールも様子がおかしいところを見ると、

想像以上に嵐が吹き荒れたようだが・・・予想外の珍客でも介入してきたか?


だが慌てる必要はない。



さて、次はどの手札を切り捨てていくか・・・。 
| 長男 ダニエル・ブラッドリー・ドーソン | 23:34 | comments(0) | - |
11:07 AM


 ブリジットから手渡された書類に軽く目を通し、

来週のパーティーに出席する来客のリストと照らし合わせる。


これでほとんどの招待客からの返事は出揃った。

未だ返事がないものについては所詮その程度だと切り捨てるか、

それとも、どこぞの貴族のように長いこと館を開けているのか・・・。



このところ、父はどうも体調が優れないようだ。

顔色もかなり悪く、何より以前は震えるほど感じられた猛獣のような覇気がない。

その様子を見るに「ドーソン伯爵家時期当主」という言葉との距離は、

もはや手を伸ばせば届く程、近くなってきたのではないかと感じさせられた。


書斎を訪れてもいつものように声一つ発さない父に対して軽く出席者の報告をすると、

父からは、体調不良のためパーティーを欠席するとの返事があった。



こういった立場にいると、自然と人脈が広くなる。

社交界に身を投じるのは趣味ではないが、我が家の為に他家と交流を深めておく必要はある。

身内同士の交流だけでなく、政治界や経済界、芸術家など業種は様々だが・・・、



『突然のことで申し訳ありませんが、折り入ってお願いしたいことがあります。』



自室に戻り、知り合いの一人に対して筆を走らせる。



『・・・したがって、薬の手配を宜しくお願い申し上げます。謝礼は・・・』



書き進めていく中で、自嘲的な笑みを浮かべてしまっていたことに気付く。

・・薬・・・か。



「ヘンリー、この手紙を至急出してくれ。それから・・・」

紅茶の用意を、と伝える前にヘンリーによって待機されていたメイドから紅茶を受け取る。

この香りは、ブーケロワイヤル・・・か。

| 長男 ダニエル・ブラッドリー・ドーソン | 11:07 | comments(0) | - |
2:51 AM


ああ、またこの夢か。



嵐の夜


暗い廊下の一番奥


鍵の掛けられた部屋


誰かの声が聞こえる部屋


怖くて


動けないでいると


部屋の扉がそっと開く


見てはいけないと思いながら


覗き込んだその先には


血だまりと


見知らぬ一人の女性


光を宿さない瞳で私を見て


哀しそうに微笑うその顔は


「ごめんなさい」


私の母と同じ顔だった
| 長男 ダニエル・ブラッドリー・ドーソン | 00:50 | comments(0) | - |
10:34 PM


またか。

いつしか、この館に新しい何かが増えるのは、または、減るのは、

この館に住む、誰かの野望が具現化した時だと・・・、そう感じるようになった。

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールとは、

そういった野望の容れ物、集合体なのではないか、と。



そしてまた、私も、そう遠くない未来に、

この館に、そんな変化を与えようとしている。




絶対に私を裏切らない存在、か。

代々ドーソン家に勤めてきた執事のヘンリーか、

メイド長のナオミか・・・。




いや。

「ブリジット・・・。」

ぽつり、と漏れた音を聞き、一瞬だけ不思議そうな顔をしたブリジットは、

いつも通りの穏やかな表情を私に向けた。


その表情を見ながら、

ふと、先日のクライドの言葉が頭をよぎる。

『例えば・・・、ブリジット。彼女を私が兄上から奪っても?』

挑発するような表情で、不愉快極まりない、湿った声だった。



その問いに、私はなんと答えただろうか。

「ああ、構わない」

だったか、

「出来るものなら、やってみろ」

その後、なんと続けたか・・・、

「お前の掌に収まるような女だったらな」

だったか・・・?











「ブリジット。」

もう一度、不思議そうな表情でこちらを伺う。

「たまには、ワインでも飲まないか?」

しばらくそのままの表情で見つめて、クスッ、と笑う。

「・・・眼鏡。」

堅苦しい銀縁の眼鏡に手を掛ける。

「・・・外したら、どうだい?」

イングリッシュ・ラベンダーの香りと、誰かの足音がした。


| 長男 ダニエル・ブラッドリー・ドーソン | 02:33 | comments(0) | - |
4:02 AM


 暗闇の中で目が覚めた。
最近、少し肌寒くなってきたかと思ったが、
寝起きの肌がじっとりと汗ばんでいる。

昔のように悪夢でも見たのだろうか。
ゆっくりと起き上がり、自室であることを確認する。
窓を開けると、心地の良い夜風と柔らかい月光が差し込んできた。


今、何時だろうか。
渇いた喉を潤したいが、そのためにわざわざ使用人を起こすのも気が引けた。
まあいい、水くらい自分で用意するか・・・。

月明かりが差し込み、青白く照らされた廊下を進む。
ふと、暗闇の中から聞き覚えのある声がした。
『これはこれは兄上殿、こんな夜更けに…いや、夜明けにどうかなさいましたか?』
耳にまとわり付くような、不快な声。クライドか。
"こんな夜明け"に、明かりも点けず大広間の階段に座り込むお前の方がよっぽどどうかしている。
『おやおや、私は見ての通り、この美しい月を眺めながら思考を巡らせていたのですよ…。』
クライドの声に合わせて、トプン、と、液体の混ざる音がする。
ウイスキーかワインか…とにかく酒には違いないだろう。

家の財産を湯水のように使い、毎晩のように娯楽に興じている愚弟が。
不快そのものでしかない高笑いを背に、私はその場を通り過ぎた。
喉を潤し、自室へ戻る頃にはもう、その場にクライドは居なかった。


私とて他人の思考がわからないほど呆けてはいないが、
相変わらずあの愚弟が、
何を考え、その腹の内に何を仕込んでいるのか、図り取ることができない。


ベッドに腰を下ろす頃には、すっかり目が冴えてしまった。
サイドテーブルに置いてあった眼鏡を掛け直し、私は、読みかけの本に手を伸ばした。
| 長男 ダニエル・ブラッドリー・ドーソン | 02:01 | comments(0) | - |

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