Le Chevalier du Lion d'Or

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールで起こる日々の出来事・・・
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霧中の酒池肉林


 そこは地上の楽園と見まがうばかりの場所だった。


所狭しと飾り付けられた絢爛豪華な宝飾品の数々。
国内外より集められたのであろう山海の珍味達は、この会場にいる人間だけでは三日三晩かけても食べつくせない程の量だ。
その傍らには名品と名高い幾多の銘酒達が、この場では月並みと言わんばかりに散乱している。
最高級のビロードが惜しげもなく使われた煌びやかな衣装を纏った美女達の芳香に、眩惑された男達がそこかしこで上機嫌な笑い声を上げていた。


厚く雲がかかり月明かりが望めぬ今宵だが、この会場内は眩いばかりに輝いている。
その中でも名門と謳われるドーソン家の次男たるこの俺の周辺は一層輝いていると言っていいだろう。
時の権力者、傾国の美女達がひっきりなしに俺のもとを訪ねるのだ。
権力、酒、美しい女達…ああ…



「反吐がでるなぁ…」



ふと漏らしたその言葉に、どこだかの地方にあるなんだかとかいう自称名門貴族がきょとんとした表情を浮かべる。
その表情を目の当たりにして、ようやくこの夜初めての心からの笑顔を向けることができた。



「これは失敬。今夜用意されたワインのあまりの素晴らしさに、恥ずかしながら我を忘れて恍惚としていたようです。…少し夜風にあたって参ります」



心にも無い言葉を彼に投げかけ、心にも無い笑顔を背に受けてその場を中座する。
この館のテラスがどこにあるかはわからないが、散策がてら館内を見てまわるのも悪くないだろう。
…こんな空々しいパーティーを催す主人の家だ、どうせつまらない館なのだろうが。


当代指折りの名門貴族の誕生日祝ということで顔を出してみれば何のことは無い。
集まってきたのはこの家に代々媚びへつらってきた、命じられれば靴の底もなめんばかりの阿りだけが取り得の連中だ。
過去にはさぞかし優秀な当主が現れたのだろうが、代を重ねる内に権力と資産を消費することしかできない、無能な家に成り下がったのだろう。


しかし…この家の使用人には悪くない者達が何人かいたな。
だが察するにあまり重用されていないようだった。
あれだけ優秀な者達が下働きをしているくらいだ…この家の腐敗も随分進んでいるようだな。


欲しいな…あの男達。


価値があるのはあんな華美な宝飾品でもヴィンテージ・ワインでもましてやただ広汎なだけの館でもない…ああいった俊英な人間達こそが至宝であるという事がなぜわからないのか。
まったく、ありがたい事だ。



「手に入れてやるさ…あの者達も、ついでにこの家もな」



涼やかな風が頬を撫でる。
どうやら目的達成は近そうだ。
| 次男 クライド・ハンニバル・ドーソン | 02:10 | comments(0) | - |
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