Le Chevalier du Lion d'Or

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールで起こる日々の出来事・・・
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Can't Go Home Again,Baby


比べてみよう。



ここにあって、アベイ・ドゥ・サン・アルセーヌに無いもの。
ここにあって、ラ・トリステス・ドゥ・レトアールに無いもの。
ここにあって、ル・シュバリエ・デュ・リオンドールに無いもの。



「まぁ・・・そりゃあ・・・」



ベッドから起き上がり夢うつつ半ば。
まだ重い体を引きずって窓を開け放つ。
身体を突き抜けていく強烈な香り。
風が、空が、太陽が。
ここが今まで過ごした場所とは違うと通りすがりに怒鳴っていく。



「海・・・見える所だろうな」



なにせここでの目覚ましは、
鼻腔から体をくすぐる典麗な紅茶の香りでもなく、
規則正しく訪れる執事の挨拶でもなく、
ましてやその執事を館中に響き渡るような大音声で呼ぶ弟でもない。



「波音で目が覚めるって・・・いやぁ・・・」



そりゃあ危ない薬を使われたり、
食い意地の張った幼馴染みのいびきで起こされるよりは・・・
まぁ、ずっと良いものなんだろう。

それにしても・・・



「ん〜、思えば遠くまで来たものだぁ〜」



まだ幾分かまとわりつく眠気を払うように体を思いきり伸ばす。
伸ばした腕の先には水平線に満ちた大海原が広がっていた。
それを掴んでみようと試みても、掌に海が収まるはずもなかった。



脱力して窓辺にもたれる。
この大海の向こう側にはヴィスラーマ王国がある。
身を乗り出そうが目を細めてみようが、決して見える事はないのだけれど。



「でも・・・確かにこの海の向こう側から来た」



ウィルマ様が所有する別邸の一つ。
故あってヴィスラーマを出立することになり、流転を経て現在はここにいる。
勿論、これもまだ目的地に向かって移動している最中であり、
定住を目的とした滞在ではない。



「アルセーヌ、レトアール、リオンドール、ネフィラ・クラヴァータ、
 ヴィスラーマ・・・はは、まるで宿無しの犬だな」



物心ついた時から様々な環境で、様々な人達と居住を共にしてきた。
仄暗く影を落とすような辛い想いをした事もあった。
しかしどの場所でも、かけがえのない大切な人達に会う事ができた。



そして・・・その人達に対して共通して言える事がある。



「ちゃんと・・・別れを済まして出てきたわけじゃないんだよなぁ・・・」



だからなのかもしれない。
どこか緊張している。
目的地に対して、回れ右して海を泳いでいきたいような気持ちになっている。



初めて、なのだ。
帰っていくという事が。



なんと言うべきなのだろう?



「ただいま」なのか「ご無沙汰しています」なのか。



どんな顔をしていればいいんだろう?



「会えて嬉しい」なのか「帰ってくるつもりはなかった」なのか。



「んん゛〜・・・」



ヴィスラーマを出立してから何度となく試みる想像。
幾通りもの再会のシミュレーション。
けれどそのどれもが都合がよい気がして、胸に収まる事はなかった。



「・・・ドーソン家を継ぐより、難しい」



寝癖で乱れた髪を無造作に掻きむしる。
考えていたって仕様がない。
着いてから考えようとこの旅に出て何度目かの決心を固め、
一人でいるよりはいいかと部屋を出る事にした。
| 次男 クライド・ハンニバル・ドーソン | 17:00 | comments(0) | - |
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