Le Chevalier du Lion d'Or

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールで起こる日々の出来事・・・
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<< メーベルのある日 | main | 11:07 AM >>
獅子身中
 

その日もざらにある朝食の風景だった。


アルヴァとエミールはヘイスティングスで寄宿舎生活をしているから当然この場にはいない。
片や同じ館で過ごしているとはいっても兄上と朝食を共にすることは滅多に無い。…ま、それは俺が兄上が言うところの「朝帰り」というやつが多い所為なんだが。
父上は…そもそも神出鬼没だ。


つまり…オレは一人だ。


だがこの時間が寂しいと思ったことは無い。
給仕をする使用人はその日によって異なるが、我が館ながらよくもまぁこれだけ型破りな者達が集まったものだ。


顔を合わせた瞬間はいつも緊張が見えるヒューイ。
だが、こちらから会話を持ちかけるとさながら万華鏡のような表情を見せてくれる。
その心根は実に純粋で、また主人の息子であるオレに質疑応答を求めてくるような大胆さも持ち合わせている。
…が、その事でヘンリー辺りに叱られてまた次回には緊張していたりするんだが、それがまた面白い。


常に笑顔を絶やさず、朝日にも似たバイタリティに溢れるアメリア。
彼女が給仕についたその日は、曇り空であろうと室内は活気に満ちている。
先日もオレのリクエストに応えてとある給仕長のモノマネをしてくれたんだが、偶然にも手紙を届けに来たナオミにそれを目撃されてしまい、刺すような視線を受けていた。
しかしアメリアの場合、ヒューイの様に落ち込む事はまず無い。それどころかそのモノマネに磨きがかかっていくのだから感心してしまう。


だが、思案の整理をするにはナオミがいい。
何の気なしに発した質疑への返答に出過ぎず、また物足りなさを感じることも無い。
会話の緩急が絶妙なのだ。
給仕長としての責任感、またそれに対する誇らしさが嫌味に映らず彼女の魅力を助長していた。


発想を転換するにはメーベルの右に出るものはいない。
人間はいつか空さえ飛べるんじゃないか…という気にさせてくれる。
彼女の着眼点は他と角度が異なり、時に非常に貴重なものになっていた。
「当たり前」なものなど無いとオレの思考に警鐘を鳴らしてくれる。


着眼点の相異という意味ではザビエルという面白いヤツもいたのだが、なぜだが先日布袋に大量の書物やら筆記用具を詰め込んでおそらく多量の涙を流しながら館を出て行った。…よだれだったのか?
別れ際、辞める理由も挨拶も無しにたった一言「その際はこのラングレー家秘伝のコニャックを用いて欲しいんでござる!!!」なんて言ってたが…どの際だ?
それにアレ…アルヴァのシャツ着て出てったんじゃないか?


だがなんと言っても神経を集中させるのはマリカだ。
朝から笑いを堪らえるのにどれだけの精力を消費するか…特にヒューイあたりが共に給仕を担当する日は命懸けだ。
そんな抱腹を目的として呼び寄せたわけじゃないんだが…あの頃を思い出して悪くない気にもなる。


あの兄上がいればそんな笑いを堪らえているオレにさえ侮蔑の眼差しを向けるが…父上は興味深くオレ達を観察しているように見えたな。近くはないが遠くもない…いつもそんな表情をしていた。


そういえば最近、父上と食事を共にする機会も減ったな。
最後に食卓を囲んだのはいつだったか…少なくともマリカがこの館に来てからは無かった様な気がする。


それより以前となるとオレの誕生日だったか…?
いやぁ、それとも夏の盛りの頃か…


コナーが食後の紅茶をテーブルに置く。
何かを言っているようだが不思議とそれは耳に入らず、柱時計をぼんやりと眺めたままいつまでも父親との最後の食事を思い出せずにいた。
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