Le Chevalier du Lion d'Or

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールで起こる日々の出来事・・・
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I can help you spread your wings


ドーソン伯爵家はダニエル・ブラッドリー・ドーソンのものである。



四人共、この三年間研鑽を重ねそれぞれが名のある後見人を
導く事ができたようでなにより。



しかし元来、家督は長男が継いで然るべきものであり、
その習慣をみだりに踏み外すという事は、
すなわち伯爵家としての求心力を低下させる事に他ならない。



よって家督は長男であるダニエルに相続させるものとする。



・・・というより、そんな簡単な事、猿でもわかるだろ?
まったく、三年間も猶予をやったというのにお前達は馬鹿の・・・
いや、猿の一つ覚えの様に後見人、後見人とお守りを探す事ばかりに
奔走しやがって。



もう少し視野を広げてみろ?馬鹿息子。
ほら、そこにいるヘンリーなんていかにも怪しいだろ?
だいたい資産諸々の管財はそこの小うるさい執事に一任してあるんだから
そいつを口説き落とすだけでも随分、景色が違って見えるはずだぞ?



まったく、どいつもこいつも「ドーソン」の名ばかりに
こだわりやがって・・・
私の・・・いや、僕の息子たちはどれもこれも、どこかのオルグレンや
カネルヴァみたいに、体裁を取り繕う事に必死なご様子で・・・



ッハン!
いいか、負け犬のお前達が覚えておく必要はないが、せいぜいこれから始まる
第二の人生の足しにでも聞いておけ。



伯爵家を継ぐのも場末の酒場の看板娘を落とすのも、大して差はない。
目的がはっきりと見えている以上、それは所詮ゲームだ。



ゲームが始まった以上、そこには能力の優劣も、生まれの良し悪しも、
ましてや容姿の是非も無い。
目的がわかっているのならどんな手段を使っても、
どんな恥をかいても相手を振り向かせてみろ。
ここ、特に下三人に言っておくぞ。



その点、ダニエルだけは大したものだな。
生まれてからこの方、僕の全てを奪う事に執心している。
メレディスも天国で喜んでいるんじゃないか?
僕の浮気に泣き寝入りするだけの女が、すんなり天国に行けるとは
思わないが。



っま、婚約をこぎつけるまでの手際は見事だが、
僕が死んで話を白紙に戻されるようじゃまだまだだな。
どうせなら早々にヴィヴィアンと既成事実を作るなりしておけば
よかったものを。



まぁ、そういう訳で一応ドーソン家はダニエルにくれてやるが、
あの石頭じゃ早晩凋落するだろ。
あのシェーンハルスだのマードックだののタヌキ親父達を
相手に世を渡っていくにはまだまだ・・・猿だな。



あとは各々好きにやれ!
お父様は天国から君達の活躍を見守っているよ。
君たちが超えられなかった偉大なる父、
サリヴァン・ブラッドリー・・・



「ドーソンより、じゃない!この享楽親父!!!」



言われっぱなしなんて悔しいじゃないか。
そう思って大声を飛ばしてみる。
そうすれば当たり前だろう。
馬車を曳く従者は驚いてこちらを振り返った。



「あ・・・いや、すまない。なんでも・・・なくはないけどなんでもない」



従者に一つ平謝り。
辺りはすっかり暗くなっていて、彼の表情まで読み取る事は出来なかったが、
おそらくさぞ怪訝な顔をしていた事だろう。



「・・・夢かぁ・・・いや、そうじゃなきゃ困るよな」



夢の出来事を反芻するように、右手で頭を掻く。
馬車の中で寝こけている間に多少汗もかいたらしい。
新鮮な空気が欲しくて窓を開けてみる。



「・・・まったく、ヘンリーが時々『アルヴァ様はサリヴァン様の若い頃に
 よく似ていらっしゃいます』なんて言うけど・・・」



・・・どこがだ。
アルヴァの方が随分と可愛げがあるというものだ。



「・・・とはいえ、今のままじゃ可愛げがありすぎるけど」



久しぶりに会ったアルヴァの姿を思い返す。
思わず笑いがこみあげずにはいられない。
あまりに笑いが過ぎてまた従者に不信に思われてしまうのもどうかと思い、
詳細な想像は避ける事にした。



オレ自身、ある程度の覚悟をもって今回リオンドールへ帰宅した訳だが、
そんな懸念も一瞬にして思考の端に追いやられた。
まったくアルヴァの奴ときたら、その場にいる全員を自分のペースに
巻き込んでいくんだからなぁ。



窓に肘をかけて頬杖をつく。
ぼんやりと外を眺める。
勿論こんな真っ暗な時間だ。
景色なんて見えやしない。



半日足らずの帰宅だった。
こうしてネフィラ・クラヴァータへ戻っていく往復の時間の方が
長いくらいだ。
そんな短い滞在、短い再会。



だけど、確信したことがある。



「・・・やっぱり、後継者にはアルヴァが相応しい」



外見がどう変わろうと、アルヴァはまったく変わらない。
卑屈になることもなく、荒むこともなく。
ただただ真っ直ぐに、自分の言葉で、ぶつかっていく。



そうしていつも、アイツの周りには人が集まる。
形や立場は違っても、アルヴァのために人が動く。
使用人は勿論の事、ミックやヴィヴィアンやエミール・・・
あの兄上でさえも。



「や〜れやれ、分が悪い戦いだなぁ」



窓から覗いた月に向かって愚痴をこぼす。
さすがに今回は嫌われたろうな。
そんな事を思いながら。



「・・・負けないぜ、アルヴァ」



これで同じスタートラインに立てた。
兄上とも、アルヴァとも、エミールとも。



これで真っ直ぐ歩いて行ける。
あの日オレを逃がしてくれたマダムやアッシュのためにも。



これで───



「アルヴァがドーソン家を手に入れる可能性は、
 三分の一から四分の二になった」



肌寒くなった気がして窓を閉める。
もう一眠りして目が覚めるころにはネフィラ・クラヴァータに着くだろうか。
そうしたら皆に今回の事を報告しよう。
皆にも今度のパーティーの招待状は届いているんだろうか?



眠気が頭の先からゆっくりと降りてくる。
そういえば招待状が見当たらないな、皆がまた揃ったらパーティーは
大賑わいだな。
そんな事を思いながら瞼を閉じる。



今度は弟に全然似ていない、あの腹立たしい父親が夢に出てこない
事を願って。
| 次男 クライド・ハンニバル・ドーソン | 17:00 | comments(0) | - |
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