Le Chevalier du Lion d'Or

ル・シュバリエ・デュ・リオンドールで起こる日々の出来事・・・
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Emergence


陽も陰り、少し涼やかな風が吹き始めてきました。



客室とワインセラーと食器類のインスペクションも終わり、

普段であればアフタヌーンティーの準備を始めようかという時間なのですが、

暫くはそうもいかないようです。




中止になったアルヴァ様の誕生パーティーから二週間が経過しました。

この館も徐々にではありますが、

いつもの静謐な空気を取り戻しつつあります。

そう、アルヴァ様を除いては、ですが・・・。






主棟前の庭園から館裏の牧草地へと、ひたすら走るアルヴァ様。

シンメトリックに刈り揃えられた薔薇園から温室の横を抜け厨房裏へ、

そして緑深い森から小高い丘を登り、馬小屋脇を通過し、

屋敷の裏門へ。






・・・12周目。





最初は生まれたての小鹿のようにふらふらと蹌踉めいていたというのに、

今はしっかりと前を見据え、大地に足を踏み出している。


そしてその懸命な姿に私はどこか懐かしいような、

郷愁を感じてしまいます・・・



風に靡く眩いオリーブグレーの髪の輝き、

目指すものを見つけた生き生きとした瞳の輝き、

・・・今は亡きあの方の面影を-----







-----あの日


一旦は白紙に戻されたものの、

ダニエル様がヴィヴィアン様と婚約を発表し、

父君であらせられるサリヴァン様がお亡くなりになった。



その動揺を引きずったままでいるところに、

ダニエル様、エミール様は自らの人生の選択をすべく、

この屋敷をお出になられ・・・


そして全幅の信頼を置かれていたクライド様までもが、

自らの進むべき道を歩むと決意され屋敷を出られたことで、

拠り所を失ってしまったアルヴァ様は心の平衡が壊れてしまわれた。



この広い屋敷にアルヴァ様ただ一人が取り残され、

葛藤の糸を吐き、後悔の念に絡めとられ、

羽化することのない繭になってしまったのです。









アルヴァ様の豊かな感受性はさながら儚いガラスのようなもの。

光が当たっている時は美しく輝くが、

自信を失ったとき、脆く砕け、自らをも傷つけてしまう・・・




花に太陽と水が、

鳥に空と止まり木が必要なように、

私は心にも糧が必要なのだと考えます。



たとえ一時的なものであるにせよ、

心満ち足りていた頃の時間に立ち返ることで、

本来のアルヴァ様の輝きを取り戻していただけるはず。

そのきっかけを作ることができるはず・・・




少々浅薄な目論見でしたが、

クライド様をはじめとする皆様のおかげで

その意図するところを達することができました。






・・・13週目。




さて、次の替えのタオルを用意しましょうか。





目的を持って邁進する姿は美しい。


ドーソン家四人の御兄弟の中で唯一人、

自らの進むべき道を見い出せなかったアルヴァ様が

漸く自らの足で立ち上がりました。

今はまだ覚束無い足取りですが・・・






サリヴァン様・・・

あなたならどう声をかけて差し上げますか・・・?


 
| 執事 ヘンリー・テオボルト・ワーナー | 14:00 | comments(0) | - |
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